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レチノールとトレチノインの違い・肌への効果

レチノール(ビタミンA)
レチノールと言うと聞き慣れない方も多いかもしれませんが、レチノールとはビタミンAのことです。
ですので、医薬品ではないので手軽に入手ができメーカーも広告が出せて売りやすい商品の成分です。
ビタミンAは広義にはレチノイド(ビタミンA類縁物)と同様に使用されることもあり、レチノール(C20H30O)だけではなく、レチナール(C20H28O)、レチノイン酸(C20H28O2)を含みます。
レチノールが、細胞の分化や増殖に関わっていることは古くから知られており、お肌に塗ると、新しい細胞が生まれて、お肌を若返らせる効果があります。
しかしながら、皮膚科などで処方されるお薬用も効果は低いのですが、様々なメーカーが独自特徴を出した製品を販売しております。これらは、手軽に使えるところがメリットになるかと思います。
トレチノイン(レチノイン酸)

レチノイン配合のレチノイン酸クリームは、アメリカでは治療医薬品として認可されている皮膚の若返り薬です。ピーリング効果のある美容成分トレチノイン酸を配合したクリームをシミの部分に塗る事によって、表皮のターンオーバーが遅くなって厚くなった角質を剥がし、表皮の深い部分にあるシミの原因のメラニン色素を約2~4週間で外に排出します。
トレチノインとは、ビタミンAの誘導体で生理活性の主役物質です。レチノイン酸(C20H28O2)の全トランス型で、All-Trans-Retinoic Acidの頭文字を取って、ATRA(アトラ)とも呼ばれています。そのため、トレチノイン≒レチノイン酸と考えていただいて構いません。
トレチノインは、皮膚科では古くから、シワ、ニキビ、シミ、毛穴の治療薬として用いられています。
レチノールとトレチノインの違い
同じレチノイドであるレチノール(ビタミンA)とトレチノインですが、その違いは分かりにくいとは思いますが、効果が強い、副作用が強いのが「トレチノイン」です。
レチノール (ビタミンA) | トレチノイン (レチノイン酸) | |
---|---|---|
分類 | 医薬部外品 /化粧品 | 医薬品 |
生理活性 | 1 | 50~100 |
肌への効果 | 小 | 大 |
副作用 | 小 | 大 |
安定性 | 悪い | 悪い |
レチノール(ビタミンA)の生理活性(作用の強さ)の強さを1とすると、トレチノインはその50倍から100倍の強さがあるとされています。
レチノイド類は細胞を増殖させる作用がありますが、1.6倍の表皮肥厚を起こすのに必要なトレチノインの濃度は0.025%、1.5倍の表皮肥厚を起こすのに必要なレチノール(ビタミンA)の濃度は1.6%であり、60倍の差があります。
トレチノインは、その生理活性作用の強さから、化粧品や医薬部外品への配合は認められていません。それに対して、作用の弱いレチノール(ビタミンA)や、レチノール(ビタミンA)にパルミン酸を結合させたパルミチン酸レチノールは、化粧品や医薬部外品への配合が認められています。
肌への効果
レチノール(ビタミンA)は体内でトレチノインへ変換されて効果を発揮することが報告されています。つまり、トレチノインは体内での生理活性の主役であるため、レチノールよりも効果が大きくなります。
レチノール(ビタミンA)の生理活性の強さはトレチノインの50分の1とされていますが、レチノール(ビタミンA)の肌への効果は、一般的にトレチノインの約10分の1と考えられています。
実際に0.25%、0.5%、および1.0%のレチノール(ビタミンA)と、その1/10濃度のトレチノインを比較したランダム化二重盲検試驗では、シワ、肌の色調、色素沈着、触覚の滑らかさ等において、有効性に有意差はなかったことが報告されています。
皮膚科で色素沈着やシワに処方されるトレチノイン濃度は0.025%~0.2%です。この研究を元にすれば、レチノール(ビタミンA)濃度ではその10倍の0.25%~2%が同等の目安になりますが、デイリースキンケアで使用する場合、当院では0.04%~0.1%の低濃度レチノール(ビタミンA)から開始して、0.3%程度までを推奨しています。
副作用
レチノイドの副作用は、「レチノイド反応」として有名ですが、 塗った部位のお肌に熱感、赤み、落屑(らくせつ=皮膚が剥がれること)が起こります。
レチノイド反応は、トレチノインでもレチノール(ビタミンA)でも両方起こりますが、作用の弱いレチノール(ビタミンA)のほうが軽度です。
レチノイドは、濃度が高くなるほど有害作用が強く出ます。当院でも治療で0.05%と0.1%のトレチノインを扱っていますが、濃度が高い製剤のほうが赤みや落屑が起こりやすいため、低濃度から処方しています。
また、トレチノインは光老化からの保護や改善作用が報告されていますが、レチノール(ビタミンA)も含めてレチノイド全てが、光の感受性を高めるため、使用中には紫外線の有害作用が出やすくなるため、十分に対策する必要があります。
安定性
レチノール(ビタミンA)、トレチノインとも、安定性については非常に悪く、空気や光によって容易に失活してしまいます。 そのため、当院では、調剤後のトレチノインの使用期限を冷蔵保存で2ヶ月間としています。
市販のものでは、酸素や光に極力触れないようなエアレス容器を採用したり、医薬品では、solid lipid nanoparticles (固体脂質ナノ粒子、脂質と界面活性剤によって粒子の内側にトレチノインを内包し界面活性剤で安定化させて分散したもの)や、リポソーム化によって安定化させる研究がされています。
レチノール(ビタミンA)はトレチノインの劣化作用
レチノールはドラッグストアーなどで手軽に入手ができるだけです。
トレチノインが入手ができるのでしたらレチノール(ビタミンA)は不要です。
副作用などの心配の場合はトレチノインの低濃度から始めれば良く、皮膚や美容クリニックでも同様に成分濃度の調整で処方されています。
メーカー製のレチノール(ビタミンA)と別の成分の配合の高価な化粧品が販売されていますが、お金の無駄です。
まずはトレチノインの原液で混ぜ物がないを利用されるとアレルギーなどの心配も低く、コスパも高いのでおすすです。
また、トレチノインは0.1%でも十分に高濃度ですので、お肌が弱い人は絶対に0.05%からがおススメです。
トレチノインによる治療
レチノール(ビタミンA)とトレチノインの違いが分かると、美容医療の現場でトレチノインが選択される理由がわかると思います。
シワ
トレチノインは、皮ふの細胞の新生を促すとともに、真皮の線維芽細胞を刺激して、コラーゲンの産生を促進します。
90年代半ばにFDAからシワ改善薬として認可を受けており、目尻などの小じわ改善に広く利用されています。また、その後トレチノイン0.02%クリームは、FDAから光老化治療薬として認可されました。
毛穴
トレチノインは、角質のターンオーバーを促進して、古い角質を剥がれやすくし、毛穴の詰まりにくくする作用があります。そのため、ダークスポットと呼ばれる毛穴の黒ずみに効果的です。
また、真皮のコラーゲン生成を促すため、たるみ毛穴にも効果的です。
当院では患者さんの状態によって、鼻の毛穴や黒ずみ治療に、2ヶ月ほどトレチノイン・ハイドロキノン療法を行い、その後レーザー治療を行っています。
ニキビ
トレチノインは、前述の毛穴を詰まりにくくする作用や、炎症を鎮める作用、皮脂の分泌を抑制する効果もあるため、ニキビをできにくくします。
海外では古くからクリームや軟膏がニキビ治療に用いられています。また、アメリカでは、2018年8月にトレチノインが0.05%配合されたALTRENO lotion(オルトレノローション)という化粧水タイプの薬が、FDAからニキビ治療目的で認可されています。
二の腕のぶつぶつ(毛孔性苔癬・毛孔性角化症)にも治療として使用されています。
ニキビ跡
トレチノインは、そのピーリング作用を利用して、局所的なニキビ跡の色素沈着や赤みに対しても用いられます。
クレーターは、軽度のものであれば、トレチノインによるターンオーバー促進作用とコラーゲン増生作用によって、目立たなくなる可能性はあります。しかし、実際の臨床現場では、クレーター治療の第一選択薬ではなく、効果も大きくありません。クレーターは真皮にある瘢痕組織が原因であり、トレチノインにはそれを破壊するほどの効力がないからです。
シミ治療
トレチノインは、細胞のターンオーバーを促し、表皮のメラニンを排出させます。美白剤のハイドロキノンと組み合わせたシミ治療は、東大の吉村先生が研究され国内で広く普及しました。
136人のアジア人を対象とし、トレチノインとハイドロキノンを3ヶ月以上使用した試験で、老人性色素斑(加齢によるシミ)や炎症後色素沈着の改善を認めています8。
また、トレチノイン0.2~0.4%とハイドロキノン5%を併用した試験で、乳首と乳輪の黒ずみを改善させたと報告されています。
今では当たり前のようにされているトレチノインとハイドロキノンを使ったシミ治療ですが、当時の功績があったからこそです。
当院でもシミ治療にトレチノインを用いておりますが、よりしっかりと治療効果が現れるレーザーの導入によって、現在は補助的な治療となっています。
黒ずみの治療では、現在でもトレチノイン・ハイドロキノン療法をメインで行うケースもあります。
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